東京高等裁判所 昭和26年(う)2621号 判決
按ずるに原審裁判官は昭和二十五年十二月五日の第四回公判期日において訴訟関係人の意見を聴いた上職権を以て弁護人申請に係る証人熊倉忠雄に対する取調方法を変更し「昭和二十六年一月十三日埼玉県浦和市高砂町豊多摩刑務所において訊問する」旨の決定を宣し、次で右期日には千葉県千葉郡幕張町実籾豊多摩刑務所習志野作業場において被告人及び弁護人の立会なくして右証人の取調をなしていることは、原審第四回公判調書及び本件記録編綴の証人熊倉忠雄の昭和二十六年一月十三日附裁判官の面前における供述調書の各記載により明らかであるが、右の証人の供述調書はその後開廷せられた第五、六回公判廷に顕出されないまま結審せられているのであつて、このことは原審第五、六回公判調書に徴し明らかであるところ、かくの如きは刑事訴訟法第三百三条に違反するのみならず更に原判決はこれを「公判期日外裁判官の面前における証人熊倉忠雄の供述」(右の供述とあるのは供述調書の誤記である)なる標目の下に証拠として挙示引用しているのであるが、かくの如く公判廷において適式の証拠調を経ない証拠書類を採つて犯罪事実を認定することは固より違法であり、かかる訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすべきことは明白であるから、論旨は理由があり原判決は既にこの点において破棄を免れない。それゆえ本件控訴は理由があるからその余の論旨に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七条により原判決を破棄し同法第四百条本文により本件を水戸地方裁判所に差し戻すべきものとし主文のとおり判決する。